新しい楽器との出会い
今年1月に注文したピアノが我が家に到着しました。
35年の長い年月を共にした古いピアノを手放すのは、なんとなく忍びないような気がしていたのですが、これまでの時間とこれからの時間を考えたら「今だな」と思えていよいよ決断しました。
搬入の日にはトラック2台に3人ずつピアノ運搬専門の男の人が乗ってきてくれました。先ず古い楽器が運び出されるのに、足やペダルが外され、ピアノ本体が大きな毛布にぐるぐるにくるまれて、ゴトンなんて音をひとつも立てずに丁寧に移動されました。その後新しい楽器が、これも手際よくかつ慎重に運び込まれました。新しい楽器の何と優雅な姿、放たれる木の香り。レッスン室の空気を変えてしまうような存在感にうっとりしました。
およそ1時間に及ぶこの作業に、運搬の皆さんが大汗をかいてお仕事してくださり、私達はそれを見ているだけで本当に頭の下がる思いでした。
トラックが帰ると、いち早くうちに来て立ち合い、見守ってくださっていた調律師さんが調律を始めてくださいました。
それにしてもピアノ1台がうちのレッスン室に設置されるまで、どのくらいの人の力が働いたのかなと、自分の見ていないところも含めて想像すると、これは大変な事なんだなと思いました。有り難味を強く感じています。
この楽器の音色から、モーツァルトやバッハを勉強したいという気持ちが湧いてきています。
(2022年9月)
レッスンに通うこと
今、レッスンに通っている子どもたちは下は5歳からはじまり上は中3生まで。毎日本当に賑やかにしています。レッスン室に入り自分の時間になると、待ってましたとばかりに一週間の練習成果を晴れ晴れと聴かせてくれる人。まずは自分の近況報告を一通り話し始める人。そうした様子とは反対に静かに集中している人、練習をサボっていてあんまり気持ちが乗らない人。顔を合わせたときの様子を観察することで、おおよそその日のレッスンの流れが見えるものです。
レッスンに来て得ることは、前回のレッスンから自分がどういう時間を積み重ねてきたか、ということに深く関わっています。
お教室に来てピアノの前に座って何か弾いていればそのうち上達する、ということはありません。
レッスンで体験したことを家に帰って自分なりに再現する力、またそれにかける時間がとても重要だと思います。
こういう書き方をすると、他の習い事と比べて気軽に楽しく続けていくのが難しく感じるでしょうか。でも見方を変えると、ピアノを習うことで身につく力は、生きていくうえであらゆることに繋がっていく。これは長年の実感です。
音楽教室の宣伝文句に、幼少のころからピアノを習うと脳が発達する、とか、教養が身につく、とか。安易に言われているのを見ると、ちょっと悲しい気持ちになります。
最近読んだある記事で、書き留めておきたいと思った言葉。久保田慶一さん(音楽学者)
によると音楽を学ぶとは「自分を知ること、他人を知ること、そして社会を知ること」
昨日、中3生の保護者会に行ったら、「夏休みの受験生の過ごし方」という先生からのお話に、久保田慶一さんの言葉とぴったり重なっている部分がありました。とても納得できました。
(2022年7月)
初めてのピティナステップ
3月27日(日)春日部市民文化会館小ホールで開催されたピティナステップのグランミューズの部にこの度初の参加をしました。大学受験まで指導を受けた恩師がここで駅長をしていることがご縁で、春日部での参加を決めました。でも果たしてどんな方々がここで演奏されるのだろう、グランミューズの部とは言え、私のような中年のおばさんが出てもおかしくないのか・・実はいろんな??があったのですが、恩師に会えるのを励みに前向きに準備してきました。
当日はなんと90人の参加。この日は感染対策のため自由に参加者の演奏を聴くことができず残念だったのですが、プログラムを見る限りでは小学生が大勢参加されたように推測しています。春日部周辺はピアノを学ぶ人がたくさんいる街なんですね。
この日最後のグランミューズの部は私を含め5人の参加でした。ここは恩師との繋がりのある学生と社会人で(もちろん私は一番お姉さんだった)ちょっと同窓会気分でホッとしたものの、いざプログラムがスタートしてみると、自分の前4人の演奏を客席で聴き、いきなりはじめましての楽器を弾くという過酷な状況でした。リハーサルなしの上、出演前一人きりになって体操すらできない辛さと言ったら・・
もう逃げられない、ここでやるしかない、という場に立たされて初めて出てくる集中。日常にない自分を見るとてもいい体験でした。
帰り道、家まで待てずに飲んだビールのおいしかったこと。
(2022年3月)
2022年がはじまりました
年が明け初めに行ったコンサートでハイドン作曲『天地創造』を聴きました。
ミューザ川崎にある素晴らしいホールに響き渡る180人に及ぶ合唱団、3人のソリスト、オーケストラ、そして指揮者で創り上げられた演奏は、新しい年が始まっても相変わらずの日常の心配ごとを忘れさせ、むしろ気持ちを前へ向けてくれる素晴らしい演奏でした。
旧約聖書に語られている創造主である神の偉業、そして今私たちはこの神さまを賛美し信仰を誓います、という音楽を2時間近くにわたって聴き続けました。(ドイツ語を翻訳した字幕が映し出されていた)
演奏する人たちがこの間集中を切らすことがないのに驚きと尊敬!
その熱を感じながらじーっと座って聴いている自分も、途切れることなく差し出される良い音楽の世界に入って聴けたのが本当に楽しかったです。
私はキリスト教の信者ではないけれど、第3部まで聴き終えたら、何か人間を越えた大いなる力によって自分が生かされているような、その目に見えない力に感謝する想いに至りました。有難いです。
ハイドンの音楽をこれまで進んで聴くことがなかったけど、ベートーヴェンにも大きく影響を与えた人でもあるし今年は注目してみよう思いました。
(2022年1月)